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「骨太の方針」記されたOTC類似薬の保険外し

「OTC」とは、「OverTheCounter(オーバー・ザ・カウンター)」の略で対面販売を意味し、「OTC医薬品」とは、医師の処方箋がなくても薬局で買える市販薬のことです。

 

「OTC類似薬」とは、医師が処方箋を出す医療用医薬品のうち、OTC医薬品と効能やリスクが似ている薬のことです。

 


内閣府>骨太の方針2025原案

原案の記述を見ると、

 

「医薬品・検査薬の更なるスイッチOTC化など、セルフメディケーションを推進しつつ、薬剤自己負担の見直しを検討する。」

 

という一文があります。

この「スイッチOTC化」がOTC類似薬の保険外しを指しています。「セルフメディケーション」とは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な体の不調は自分で手当することを意味します。

したがって、上記の一文の意味するところは、

 

「普段から健康に気を使い、お医者様にかかるほどではない体の不調が起きた場合、OTC医薬品を買える身近な薬局等に足を運べるように、OTC類似薬を保険から外して薬剤自己負担の見直しを図ります」

 

ということでしょう。

 

OTC類似薬の保険外しのメリット・デメリット

メリットはいうまでもなく、医療費を削減できることです。

高齢者の増加や技術進歩に伴う医療の高額化によって医療費は増加ペースが加速傾向にあり、医療保険の財政は逼迫しているため、OTC類似薬の保険外しは医療保険全体を守ることに寄与します。

 

デメリットは、患者の負担が基本的に重くなることです。

保険給付分が自己負担になるうえ、市販薬には販売価格に広告費などが上乗せされる可能性もあります。加えて、医師の診断なしに市販薬を選ぶことには、危険も伴います。患者が風邪と思って市販薬を買い求めたものの、実は重大な疾患が隠れており、診断の遅れにつながるということもあり得ます。

 

骨太の方針2025閣議決定

令和7年6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025 ~「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ~」(骨太方針2025)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。

 

原案にあった

 

「医薬品・検査薬の更なるスイッチOTC化など、セルフメディケーションを推進しつつ、薬剤自己負担の見直しを検討する。」

 

は、

 

「当初の医師の診断や処方に基づき症状の安定している患者が定期的に服用する医薬品や、低侵襲性検体である穿刺血を用いる検査薬を含む医薬品・検査薬の更なるスイッチOTC化など、具体的な工程表を策定した上でセルフケア・セルフメディケーションを推進しつつ、薬剤自己負担の見直しを検討する。」

 

と変更され、これまでの検討段階的な表現から、「スイッチOTC対象を明記+工程表策定」と前進しました。今後の動向に注目です。

 

 

【参考】内閣府>経済財政運営と改革の基本方針2025(閣議決定後)

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/decision0613.html

 

【参考】内閣府>令和7年第7回経済財政諮問会議(閣議決定前)

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0606agenda.html