少子高齢化の急激な進行により、持続的な成長や労働力不足への対応には多様な人材の活用が重要となっています。
なかでも高齢者の就労意欲は高く、就職率も上昇傾向にあります。
一方で高齢者雇用にあたっては、賃金水準の問題をはじめ、多くの課題もあります。
このような状況をうけ、経団連は4月16日、各種調査等を踏まえ取りまとめた報告書を公表しました。
現状と課題
高年齢者雇用安定法への対応状況について、多くの企業において「継続雇用制度の導入」という措置をとっていることを示したうえで、以下を例として、項目別の現状と課題をまとめています。
●職務・役割、賃金水準・賃金制度
多くの企業では高齢社員の職務は従前と同様か縮小して割り当てられ、基本給等の水準が下げられるケースが多い。こうしたことは高齢社員のエンゲージメント・パフォーマンスの低下とつながっている可能性がある。
●人事制度評価
高齢社員への人事評価の基本給への反映や本人へのフィードバックを行わないケースがみられる。
●マネジメント
半数程度の企業で高齢社員のマネジメントや関係性に課題を感じているとされる。加齢に伴う個人差の拡大を踏まえ、職場環境や働き方における個別の配慮・マネジメントや、良好な関係の構築が必要となっている。
課題解決に向けた対応
課題解決に向けた基本的な考え方として、
- 高齢社員のさらなる活躍推進、
- 能力や知識等に適した職務・役割の割り当て、
- 成果・貢献度を評価して適切に処遇に反映すること
を挙げています。
それと同時に、従来のイメージにとらわれずに高齢者の心身等の変化を認識することが重要としています。
例
・「結晶性知能」は加齢による影響を受けにくい、
・ワーク・エンゲージメントは加齢に伴って上昇する傾向にある 等
また、以下を例として、項目別の具体的対応をまとめています。
●職務・役割、賃金水準・賃金制度
・自社の実情等に応じた廃止も含めた役職定年制のあり方の検討
・高齢社員による創意工夫の促進
●人事評価制度
・同一労働同一賃金の観点による検討
・定年年齢の引上げや定年廃止を検討している企業において、退職金制度を有している場合、そのあり方を含めた検討
●マネジメント
・個別事情に配慮した別制度による運用の検討
・評価結果のフィードバックの実施、処遇への適切な反映
今後の方向性
同報告書は、高齢者雇用制度を「定年設定型」と「定年廃止型」に大別し、現状、「定年設定型」のうち、「定年後に適用する人事・賃金制度を別建て」とする企業が大勢であるとしています。
そのうえで、高齢社員の活躍推進に資する様々な施策の中から、自社にとって最適な「自社型雇用システム」確立の一環として、検討・見直ししていくことが望ましいとしています。
【参考】一般社団法人日本経済団体連合会>高齢社員のさらなる活躍推進に向けて
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/033.html