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令和5年度最低賃金額全国平均で初の1,000円超え

7月28日、中央最低賃金審議会で令和5年度の地域別最低賃金額改定の目安の答申が取りまとめられ、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円に決定しました。引上げ額はこれまでで最も大きく、全国平均で時給1,002円と、初めて1,000円を超えました。 

これを受けて全国の地方最低賃金審議会で議論が始まり、8月7日には東京都では41円引き上げて1,113円、また秋田県では過去最高の上げ幅となる44円引き上げて897円とするよう答申した、と報じられています。

 


引上げ額の目安が4.3%を基準として検討された理由

政府の方針や賃金、通常の事業の賃金支払能力、労働者の生計費を総合的に勘案して4.3%が基準とされましたが、目安の議論を行ってきた公益委員見解では、消費者物価の上昇が続いていることや、昨年10月から今年6月までの消費者物価指数の対前年同期比は4.3%と、昨年度の全国加重平均の最低賃金の引上げ率(3.3%)を上回る高い伸び率であったこともあり、特に労働者の生計費を重視した目安額としたとされています。また、この目安額が中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものであると言わざるを得ない、ともしています。

 

厚生労働大臣が中小企業・小規模事業者に対する支援策に言及

中央最低賃金審議会の答申において要望のあった、業務改善助成金の対象事業場拡大等について、加藤厚生労働大臣は8月8日の記者会見において、できるだけ早期に行うよう検討を進め、検討内容を踏まえて後日発表したいと表明しています。

 

年俸制、月給制、日給制であっても最低賃金チェックは忘れずに!

年俸制、月給制、日給制であっても、【時間額に換算した結果<最低賃金】であれば、最低賃金法違反です。

  • 家族手当、住宅手当など、労働対価以外の手当を厚くした賃金体系を構築している(=時間額を低く抑える効果もある)
  • 固定残業代(定額残業、みなし残業)を運用している。

場合、最低賃金に抵触する可能性も考えられます。

 

最低賃金の対象となる賃金:【毎月支払われる】基本的な賃金

具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

(最低賃金法第4条第3項、最低賃金法施行規則第1条第2項)

 

(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

(4)所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

 

出典:厚生労働省>最低賃金制度の概要

●毎月固定で支払う固定残業代(3)(4)(5)

時間外労働等の対価として支払う賃金ですので、最低賃金の対象から除外します。

 

●住宅手当(6)

時間外労働の時間単価算出においては、一定条件を満たす場合に限りにおいて除外できますが、最低賃金の対象からは除外しません=含めてOKです。

 

●精皆勤手当(6)

遅刻、欠勤、早退等があった場合には、手当は支給しない。といった手当であれば、最低賃金の対象から除外します。

名称は精皆勤手当であっても条件成就を要件とせず、毎月支払う手当であれば最低賃金の対象と扱います。

 

【参考】時間外労働の割増賃金計算:除外が認められている賃金(労基法第37条第5項、労基則第21条)

  • 時間外・休日・深夜割増賃金(固定残業代も除外対象)
  • 家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、
  • 臨時に支払われる賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

最低賃金額を満たしているかを確認する方法

最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します(最低賃金法施行規則第2条)。

 

(1)時間給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

 

(2)日給制の場合

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)

 

(3)月給制の場合

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 

(4)出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

 

(5)上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合

例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

 

出典:厚生労働省>最低賃金制度の概要

 

●1箇月平均所定労働時間の算出方法

  1. 年間所定労働日数=1年間の暦日数(閏年は366日)-1年間の休日日数
  2. 年間所定労働時間数=年間所定労働日数*1日所定労働時間数
  3. 1箇月平均所定労働時間数=年間所定労働時間数÷12か月

 

 

ご不明な点などございましたらお気軽にお声掛けください。

 

【参考】厚生労働省>令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34458.html

 

【参考】厚生労働省>最低賃金特設サイト

https://pc.saiteichingin.info/

 

【参考】厚生労働省>最低賃金制度の概要

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-09.htm