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シニア人材の処遇の不透明さは若手社員の流出につながる~パーソル総合研究所の調査から

改正高年齢者雇用安定法が4月1日に施行されました。

従業員の70歳までの就業確保を努力義務とする規定が盛り込まれています。

 

法令への対応は当然すべきことですが、パーソル総合研究所が行ったシニア人材の就業実態や就業意識に関する調査からは、法令対応以外の会社の対応も、経営にとって重要であることがわかります。

 


定年後再雇用後の年収の変化、職務の変化

定年後再雇用により、約9割の人が定年前より年収が下がっており、「50%より下がった」との回答が27.6%で最多、平均では44.3%の低下となっています。

 

職務の変化については、再雇用者全体(フルタイム・パートタイム・嘱託)では、次のようになっており、いずれの雇用形態でもおおむね似た傾向です。

 

●定年前とほぼ同様:55.0%

●定年前と同様だが業務範囲・責任が縮小:27.9%

●定年前と関連するが異なる職務:8.1%

●定年前とは全く異なる職務:9.0%

 

シニア人材のモチベーションを考えるうえで参考にしたいデータです。

 

シニア人材に対する会社の対応が若手社員に与える影響

調査結果からは、若い世代ほど、シニア人材は「給料をもらいすぎだ」「成果以上に評価されている」と感じており(いずれも20代社員では約3割)、不公平感を抱いています。

また、シニア人材の役割や仕事を明確にしていなかったり、シニア人材が孤立しているような会社では、転職意向を持つ若手社員が、そうでない会社に比べて2倍以上多いようです。

この傾向は、20代、30代、40代のどの年齢層でも同様です。

 

シニア人材の処遇が不透明なことが、人材流出の大きな要因となることがわかります。

 

シニア人材への教育・研修が不十分

シニア人材に対する教育・研修の実施について、「実施されていない」との回答が50.7%、「実施されているが、充実していない」との回答が29.8%あった一方、「実施されており、充実している」との回答は2割以下(19.5%)でした。

 

シニア人材の職務の検討やモチベーション維持・向上を考えるにあたり、この点はもっと重視する必要があるかもしれません。

 

日本の労働力人口が減少していくと推計されているなか、シニア人材への対応をきちんと考えることは、会社の成長にもつながる前向きな話なのです。

 

 

【参考】株式会社パーソル総合研究所>70歳までの就業時代に向け、シニア人材の実態や若手への影響に関する調査結果を発表 定年後再雇用で年収は平均44.3%減。過半数は職務変わらず

https://rc.persol-group.co.jp/news/202105281100.html