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「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の改正

2021年3月25日にテレワークガイドラインが改定されました。

 

改正前:情報通信技術を利用した事業場外勤務(テレワーク)の適切な導入及び実施のためのガイドライン(2018年2月22日)

 

改正後:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(2021年3月25日)

 

これを受ける形で、在宅勤務における交通費(通勤等にかかる手当)、在宅勤務手当の健康保険・厚生年金保険における取り扱いに関する内容が【3つ】追加されました。

  • 社会保険料の計算基礎である標準報酬月額の決定・改定に影響がある重要な改正です。
  • 支給実態、手当の定義によっては給与明細の支給項目を分割する必要があります。

追加された【3つ】の内容を紹介します。

 


問1:在宅勤務・テレワークを導入し、被保険者が一時的に出社する際に要する交通費を事業主が負担する場合、当該交通費は「報酬等」に含まれるのか。

(答)基本的に、【当該労働日における労働契約上の労務の提供地】が【自宅】か【事業所】かに応じて、それぞれ以下のように取扱う。

 

①当該労働日における労働契約上の労務の提供地が【自宅】の場合

労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には【含まれない】。

 

②当該労働日における労働契約上の労務の提供地が【事業所】とされている場合

当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に【含まれる】。

 

なお、在宅勤務・テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、随時改定の対象となる。

 

(参考)

当該日における労働契約上の労務の提供地 「自宅-事業所」間の移動に要する費用の取扱い 保険料の算定基礎
自宅 業務として一時的に出社する場合は実費弁償(「報酬等」に該当しない) 非対象
事業所 通勤手当(「報酬等」に該当する) 対象

問2 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合、当該手当は「報酬等」に含まれるのか。

(答) 在宅勤務手当の取扱いについては、当該手当の内容が事業所毎に異なることから、その支給要件や、支給実態などを踏まえて【個別に判断】する必要がある。

 

基本的な考え方は以下の通り。

① 在宅勤務手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償に当たらないもの)である場合

在宅勤務手当が、被保険者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を事業主に返還する必要がないものであれば、「報酬等」に含まれる。

(例)事業主が被保険者に対して毎月5,000 円を渡し切りで支給するもの

 

② 在宅勤務手当が実費弁償に当たるようなものである場合

在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を事業主が被保険者に支払うようなものの場合、その手当が、業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償に当たるものとして、「報酬等」に含まれない。

 

問3 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合の随時改定の取扱いはどうなるのか。

(答) 在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支払われることとなった場合は、固定的賃金の変動に該当し、随時改定の対象となる。

 

交通費の支給がなくなった月に新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支給される等、同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定のいずれの対象となるかを判断する。

 

なお、新たに変動的な在宅勤務手当の創設と変動的な手当の廃止が同時に発生した場合等において、創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できない場合は、3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。

 

また、一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合には、当該実費弁償分については「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に含まれる。

 

この場合、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償以外の部分の金額に変動があったとしても、固定的賃金の変動に該当しないことから、随時改定の対象とはならない。

 

在宅勤務にかかる費用負担等については源泉所得税関係でも2021年1月にFAQが公開されています。

【参考】国税庁>在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf

 

  • 給与支給項目をどのように管理すればよいのか?
  • 現在支給している在宅勤務手当はどのように扱うのが適切なのか?疑問が残っている
  • これから在宅勤務に対する手当支給を検討しているがどのような考え方で検討すればよいのか?
  • これからは在宅勤務を主軸にした勤務体制を検討している。それに合わせて賃金体系も変更したいと考えているがどのような考え方で検討するのがベターか?

など、ございましたらお声掛けください。

 

【参考】厚生労働省>「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210405T0110.pdf