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コロナ禍でも「社長就任後10年未満の企業」の約6割は直近期黒字~日本商工会議所調査

日本商工会議所が3月5日、「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」調査の結果を公表しました。

 

調査は2020年8月17日~9月25日に各地商工会議所管内の会員企業14,221件に対して行われ、4,140件の事業者から回答を得たものです。

 

 


事業承継の現状とコロナ禍の影響

まず、会員企業の後継者の決定状況は「経営者年齢が60歳以上の企業」で約半数が決定済みの一方、後継者不在の企業が約2割を占めていました。

 

また、同族経営が多数を占める中小企業では親族内承継が8割近くを占める一方、親族外承継も徐々に増加しており、2000年代は約1割、2010年以降では約2割となりました。

 

今回の調査では、事業承継の時期について、コロナ禍の影響で売上が減少している企業ほど、事業承継予定時期を後ろ倒しにする傾向があることがわかりました。

 

一方で、経営者の在任期間別の利益状況をみると、「社長就任後10年未満の企業」の約6割は直近期黒字の一方、「社長就任後30年以上の企業」はコロナ禍を受けて赤字を見込む割合が最も大きく、事業承継によって経営を活性化している企業がコロナ禍においても業績を上げている傾向があることがわかります。

 

事業承継の課題

事業承継への障害・課題としては、「後継者への株式譲渡」が最も多く、約3割を占めました。

後継者へ株式譲渡を行う際の障害は、「譲渡の際の相続税・贈与税が高い」が約7割、「後継者に株式買取資金がない」が約6割で、税制面および資金面が課題となっています。

 

事業再編・統合(M&A)

事業再編・統合(M&A)については、「過去に買収を実施・検討した企業」は全体では約15%でしたが、「売上高10億円超の企業」に絞ると、「買収を実施・検討した企業」は約4割を占めていました。

 

また、買収先では、後継者難が深刻化している小規模企業(従業員20名以下)が約7割を占めており、M&Aが後継者不在企業の事業継続の受け皿となっていることがわかります。

 

買収目的では、「売上・市場シェアの拡大」が約7割、続いて「事業エリアの拡大」が約4割。買収目的・期待効果の達成度は、「概ね達成した」が約半数を占めており、中小企業の事業拡大にM&Aが功を奏していることがわかります。

 

コロナ禍においても、事業承継については計画を遅らせることなく進めていくことが中小企業の業績の維持・拡大に寄与するといえそうです。

 

 

【参考】日本商工会議所>「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」調査結果について

https://www.jcci.or.jp/news/2021/0305151507.html