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個人向け新型コロナ対応休業支援金、雇用調整助成金の上限額引上げはどうなる?

6月8日、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律案」が国会に提出されました。

 

この法案には個人向け新型コロナ対応休業支援金や雇用調整助成金の上限額引上げ等が盛り込まれており、会期末(17日)までの成立を目指しています→6月12日成立しました。

 


個人向け新型コロナ対応休業支援金とは?

雇用調整助成金が活用できない企業の労働者を対象に、休業実績に応じて賃金の8割を支給(上限月額33万円)するものです。企業に雇用されている人であれば、雇用保険の被保険者でなくても支給されます。

 

この支援金について、政府が企業の休業手当支払義務を肩代わりするものではないと、厚生労働省の審議会で示されています。

 

また、田村憲久元厚生労働大臣は、

  • 支給に際して企業に休業手当を支給していないことがわかる書面を発行させること

  • 受給した労働者を雇用する企業に対して休業手当不支給につき指導等を行う可能性があること

を、出演した民放番組で発言しています(6月9日放送「報道1930」BS-TBS)。

 

雇用調整助成金の上限額引上げ

上限額の1万5,000円への引上げについて、厚生労働省の審議会では、すでに支給決定している部分についても、4月1日に遡って差額が支給されると、示されています。

 

また、これまでの上限額(8,330円)で労使協定が締結済みである場合、締結し直す必要はなく、変更して、休業手当率が引き上げられる人について引き上げたもので申請すれば、引き上げたもので支給決定されると、示されています。

 

さらに、生産指標について、売上への影響が1年後や特例期間を超えたときなど遅れて出る業種について、直近の売上に影響する取引に関する指標で評価することも可能で、相談により対応可能な部分があり得ると、示されています。

 

求められているのは「雇用維持」

コロナ問題で深刻な影響が生じていますが、企業が政府の支援措置を活用せずに労働者の解雇等を行い、有効性が争われた場合、無効となる可能性が高いといわれています。

 

 

雇用維持が困難な状況で負担を抑える手段は、解雇に限られません。

労使関係を悪化させてしまうと、その手段を講じるチャンスを失いかねません。

まずはどのような手段を講じ得るのか、専門家に相談したうえで実施しましょう。

 

【参考】厚生労働省>報道発表資料>雇用調整助成金の受給額の上限を引き上げます(令和2年6月12日)

https://www.mhlw.go.jp/stf/press1401_202005061030_00004.html

 

【参考】厚生労働省>報道発表資料>新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金の上限額等の引上げ及び対象期間の延長について(制度改正のお知らせ)(令和2年6月12日)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11844.html

 

 

【参考】厚生労働省>雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

【参考】厚生労働省>小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html

 

 

【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構>緊急コラム>新型コロナ休業支援金/給付金の諸問題

https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/column/011.html

(注)本稿の主内容や意見は、執筆者個人の責任で発表するものであり、機構としての見解を示すものではありません。

今回成立した改正法案は、労働基準法第26条休業手当の解釈を巡って見解が分かれています。

解釈基準(目安)が曖昧なまま成立した法案です。今後の行政の動きから目が離せません。