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被用者保険の適用拡大などを盛り込んだ年金改正法案を国会に提出

令和2年3月初旬に、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。

 

今後の国会での審議の動向から目が離せませんが、特に重要な改正項目を確認しておきましょう。

 


1.被用者保険の適用拡大

[1]短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件を段階的に引き下げる(現行500人超→100人超→50人超)。

 

[2]5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、公認会計士等の資格を有する者(政令で規定)が法令の規定に基づき行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加。

 

2.在職中の年金受給の在り方の見直し

[1]高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時に改定する仕組みを導入。

 

[2]60歳台前半の在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大する(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から「47万円(令和元年度額)」に引き上げる)。

 

3.受給開始時期の選択肢の拡大

現在60歳から70歳の間となっている老齢厚生年金・老齢基礎年金の受給開始時期の選択肢を、「60歳から75歳の間」に拡大する。

 

4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等

[1]確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げる(※)とともに、受給開始時期等の選択肢を拡大する。

※企業型DC:厚生年金被保険者のうち65歳未満→70歳未満

※個人型DC(iDeCo):公的年金の被保険者のうち60歳未満→65歳未満

 

[2]確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大(100人以下→300人以下)、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度面・手続面の改善を図る。

 

5.その他

「短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ」など

 

施行時期は、令和4年4月1日を基本として、段階的に設定されています。

たとえば、「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」についての企業規模の要件の拡大は、

令和4(2022)年10月1日から「100人超」、

令和6(2024)年10月1日から「50人超」という予定となっています。

 

企業や年金受給者などに大きな影響を及ぼす改正項目が多いため、施行までにある程度の期間が置かれているようですが、どのような改正が行われようとしているのかは早めに押さえておきたいところです。

 

 

【参考】厚生労働省>第201回国会(令和2年常会)提出法律案

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/201.html

 

【参考】厚生労働省>年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/000601826.pdf