産後1年以内に職場復帰する女性が増加しています。
約半数の世帯が夫婦共働きといわれる現在では、育児と仕事を両立するために、育児休業を早めに切り上げる方が多いようです。
個別の理由としては、経済的な事情のほか、保育園への入りやすさを重視した、自身のキャリアのため、早期復帰を職場から求められた、などさまざまです。
働きながらの母乳育児
ここで問題となるのが、母乳育児を行っている従業員の環境整備です。
世界保健機関(WHO)では、生後2年以上母乳を与え続けることを推奨しています。
また労働基準法では、生後満1年以内の子を育てる女性は、休憩時間のほかに、1日2回、各30分の育児時間を請求できます。
直接授乳ができない環境であっても、この育児時間等を利用して搾乳をし、母乳を保存、持ち帰ることで、働きながら母乳育児を続けることができます。
しかし、搾乳用のマザーズルーム・休憩室などを設置している企業は多くはありません。
母乳育児を続けながら復帰した女性の多くが、トイレや、鍵のかからない会議室など、不衛生かつ落ち着かない環境での搾乳を行っています。
先進的な取組み
台湾では、2016年に法改正を行い、職員100人以上の企業の雇用者は、授乳室、託児施設および適切な託児サービスを提供しなければならないこととしました。
日本でも、支援の取組みが広まりつつあります。
ある企業では、多様な人材を確保することを目指す試みの一環として、社内に搾乳室を設置しました。
また、従来からあった保健室を搾乳室として利用できるよう改良した例や、母乳を保存する冷凍庫を設置、部屋に鍵をかけ安全性に配慮したなどの例もあります。
企業に求められる姿勢
仕事と母乳育児の両立に悩む女性従業員を支援し、復職を後押しできれば、双方にとっての利益となります。
また、企業のこういった姿勢は、従業員エンゲージメントの向上につながります。
一方、企業が支援の姿勢をまったく見せない場合、働き盛りである子育て世代の従業員の不安は増し、出産・育児を契機とした離職というリスクを高めることになるでしょう。
また、現在の新卒世代では「共働きしながら育児も夫婦で協力したい」という意見も多く、こういった求職者から忌避される懸念もあります。
多様な人材を活かすためのアプローチの一つとして、母乳育児を行う従業員の環境整備を考えてみてもいいかもしれません。