労働政策研究・研修機構が、「同一労働同一賃金ガイドライン」を含めた「パートタイム・有期雇用労働法」等の施行を控え、企業とそこで働くパートや有期雇用の労働者を対象としたアンケート調査の速報を公表しました。
企業調査では、職務が正社員と同じ労働者の賃金水準は「正社員の8割以上」とする企業が6割超
まず、企業を対象としたアンケートでは、「有期雇用でフルタイム」「有期雇用でパートタイム」「無期雇用でパートタイム」の労働者を雇用する企業それぞれに正社員との職務(業務の内容や責任の程度)の相違を尋ねると、「業務の内容も、責任の程度も同じ者がいる」企業の割合は、「有期雇用でフルタイム」の労働者がもっとも高い29.1%で、次いで「無期雇用でパートタイム」の労働者が12.8%、「有期雇用でパートタイム」の労働者が8.8%の順でした。
また、正社員と「業務の内容も、責任の程度も同じ者がいる」場合に、その基本的な賃金水準がどうなっているかという質問では、「正社員の8割以上」と回答した企業の割合が、「有期雇用でフルタイム」66.9%、「無期雇用でパートタイム」64.0%、「有期雇用でパートタイム」60.9%と、いずれも6割を超えていました。
労働者調査では、3人に1人が「正社員より賃金水準が低く、納得していない」と回答
一方、「業務の内容も責任の程度も同じ正社員がいる」と回答した労働者を対象に、正社員と比べた自身の賃金水準をどう思うかという質問では、「同等もしくはそれ以上の賃金水準である」割合が10.8%、「正社員より賃金水準は低いが、納得している」が21.6%で、「正社員より賃金水準が低く、納得していない」が33.5%、「何とも言えない・分からない」が32.8%という結果でした。
また、「業務の内容が同じ正社員がいる」と回答した労働者を対象に、そうした正社員と比較して納得できない制度や待遇があるかという質問では(複数回答)、「賞与」を挙げた割合がもっとも高い37.0%で、これに、「定期的な昇給」が26.6%、「退職金」が23.3%と続きました。
さらに、全有効回答労働者を対象に、現在の勤務先に限らずこれまで働いてきた中で、正社員と「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の間で、業務の内容および責任の程度、人材活用の仕組み、その他の事情に照らしても、不合理な待遇差を感じたことがあるか尋ねると、「ある」とする割合が21.3%で「ない」は35.2%、「分からない・考えたことが無い」が39.4%となりました。
また、不合理な待遇差を感じたことが「ある」場合に、企業に対して待遇差の理由等の説明を求めたいと思うか尋ねると、「説明を求めたい」割合は37.2%で、「必要ない」が25.2%、「分からない・考えたことが無い」が36.7%でした。
調査結果をみるかぎり、企業側の意識と労働者側の意識には大きな差があり、企業としては、不合理な格差をなくすのはもちろんですが、「合理的な理由がある」場合でも、労働者に対して一層の説明の努力が求められそうです。
【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構>記者発表「『パートタイム』や『有期雇用』の労働者の活用状況等に関する調査」(企業調査)及び 「働き方等に関する調査」(労働者調査)結果(2019年12月18日)
https://www.jil.go.jp/press/documents/20191218.pdf?mm=1554