政府は、令和元年版の「過労死等防止対策白書」を公表しました。
「過労死等防止対策大綱」では、長時間労働などの問題から、特別調査をする業種を定めています。
今年は新たに重点業種として、建設業とメディア業の調査分析結果が記載されました。
そこで浮き彫りになったのは、建設業では現場監督として働く人たちがうつ病などの精神疾患となり、自殺に至るケースが多いこと、また、メディア業では20~30代の若い世代に精神疾患による労災認定が多いことでした。
建設業では現場監督に過労自殺集中
白書によると、建設業では2010年1月~2015年3月に311人が労災認定され、132人が過労自殺(未遂を含む)でした。
中でも現場監督として働き、精神疾患となって労災認定された人は59人で、このうち半数以上の30人が自殺していました。
59人が抱えていたストレスの要因としては「長時間労働」が最も多く挙げられています。
国内では東日本大震災後の復興事業などで全国的に建設需要が伸びています。
一方、建設業で働く人の数は減り、昨年はピーク時より26%少ない503万人でした。
人手不足のなか、過重な労働環境に追い込まれていった人が多いのではないかとみられています。
労働時間をみると、建設業の現場監督は、6人に1人にあたる16.2%が週60時間以上。
月換算すると、労災認定の目安である「過労死ライン」の残業80時間を超過する水準でした。
建設業全体では、9.9%が60時間以上。
現場監督以外の職種別では、施工管理や設計士など「技術者」は7.1%、現場で作業する「技能労働者」は3.5%でした。
メディア業では若い世代に過労自殺集中
2010年1月~2015年3月で、広告会社や放送局、新聞社、出版社などのメディア業では、ディレクター、プロデューサー、記者ら計52人が労災認定されました。
このうち精神疾患で労災が認められたのは30人で、うち4人が過労自殺でした。
30人中19人が20~30代の若手で、過労自殺した4人も全員が20歳代でした。
背景にあるストレスは、長時間労働や仕事量・質の変化、上司とのトラブルが多かったとされています。
労働時間を見ると、メディア業は週60時間超が2.9%でした。
放送業が最多の3.9%で、広告は2.5%。新聞では2%、出版で1.3%でした。
民間企業全体では過労自殺減少するも、いまだ高い水準
過労死等防止対策大綱では労働時間が週60時間以上の労働者の割合を2020年までに全体の5%以下にする目標を掲げており、2018年の全業種平均は6.9%でした。
2018年度の民間企業における過労死や未遂を含む過労自殺は計158件。
2017年度から17%減少しましたが、いまだ高い水準にあり、一層の対策が望まれます。
【参考】厚生労働省>過労死等防止対策白書
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html