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人手不足で増えている「自己都合退職トラブル」

退職の意思を会社に伝えようとする従業員に対し、会社が退職を認めないという「自己都合退職トラブル」が増加しています。

 

「上司が面談に応じない」「退職届を受理しない」「離職票さえ渡さない」「有給休暇を取得させない」「辞めた場合は損害賠償請求すると脅迫する」などがその代表例です。

 


解雇トラブルの相談件数と逆転

昨年度、都道府県労働局および労働基準監督署に寄せられた民事上の個別労働紛争相談のうち、「自己都合退職」は2番目に多い38,954件でした。この件数は直近10年間で増え続けており、平成27年度を境に「解雇」を上回っています(厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)。

 

かつての不況下においては解雇トラブルがよくみられましたが、人手不足のいまは自己都合退職トラブルが多い時代です。この傾向はしばらく続くでしょう。

 

民法上は2週間で退職できる

労働者は法律上、期間の定めのない雇用の場合、いつでも雇用の解約の申入れをすることができます。また、会社の承認がなくても、原則として解約の申入れの日から2週間を経過したとき、雇用契約は終了します(民法627条1項)。

 

就業規則の「退職」の項目においては、業務の引継ぎ等の必要性から、「退職希望日の少なくとも1カ月前に退職届を提出」等と規定することも多いですが、この規定のみを理由に退職を認めないということはできません。

 

従業員の退職でもめないために

一度退職を決意しその意思を表明している従業員に対し、慰留・引き留めを行ったところでさほど効果はないものですし、度を過ぎれば前述のような法的案件にもなりかねません。

 

くれぐれも感情的な対応はせず、淡々と引継ぎや退職手続をさせましょう。

最近では、「退職代行ビジネス」とわれる、民間企業が本人に代わって退職手続を行うサービスを利用して、会社との自己都合退職トラブルを防ぐ退職者も増えています。この場合、本人と面と向かうことなく、会話もないまま退職が完了してしまいます。

 

従業員が自己都合退職に至る動機はさまざまですが、そもそも「辞めたい」と思わせない会社づくりも大切です。