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平成29年度の過労死等(脳・心臓疾患、精神障害)は増加傾向に

厚生労働省から、平成29年度の過労死等の労災補償状況が公表されました。

 

過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況がわかる調査結果となっています。

 

 

厚生労働省>報道発表資料

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00039.html

 

 


脳・心臓疾患に関する事案

ゆるやかに増加傾向にあり、840件の請求がありました。

業種別では、道路貨物運送業(ドライバー)が目立って多く、次いでサービス業(営業職)、建設業(総合工事業の建設従事者)で多くなっています。

 

年齢別では40歳以降がほぼ9割を占めています。

また、労災の認定基準にもある通り、1か月当たり80時間以上の時間外労働がある場合に、急激に支給決定件数が増加しています。

 

精神障害に関する事案

こちらも増加傾向にあり、1,732件の請求がありました。このうち、当該労働者の自殺(未遂を含む)は221件ありました。

 

業種別では、医療・福祉が目立って多く、次いで道路貨物運送業、情報サービス業、総合工事業等で多くなっています。時間外労働時間別でみると、脳・心臓疾患の場合とは異なり、どの層でも平均的に支給決定されているようです。

 

なお、労災の認定基準では、精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、一定の事象が類型化されています。

 

この「出来事」別では、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」の順に支給決定件数が多くなっています。

 

裁量労働制対象者に関する労災補償状況

最近話題の裁量労働制ですが、裁量労働制対象者に関する支給決定件数は、脳・心臓疾患では減少傾向にありますが、精神障害については増加しています。

年齢別では、中心は40歳代ですが、20歳から59歳まで全般的に多くなっています。

 

これらはいずれも、労災保険による補償の請求・決定件数ですが、労災補償の請求にいたる前の、労働基準監督署等への相談件数ははるかに多いものと想像できます。

 

また職場の精神障害に関する報道等を受け、労災認定の基準が具体的になるにつれ、メンタルヘルス、あるいはパワハラ等について医師や労働基準監督署等へ相談することの労働者側の心理的抵抗感も少なくなっている状況があります。

 

事前の予防を主眼にした職場環境づくりが重要となっています。