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賃金管理_給与計算フロー

給与計算=賃金台帳を調製することと同じです。

 

給与計算を実行できる期間は、給与計算期間の締切日の翌日から支払日の前日まで。

 

給与計算そのものが終わっても、月額変更確認、現実の給与支払い、法定控除項目の納付など賃金台帳を参照する関連業務(いわば「残務処理」)があります。

 

賃金計算担当者が経理を兼務する場合には

賃金(給与・計算)計算業務=賃金台帳を適切に調製する+残務処理と捉えましょう。

 

労基法_法定帳簿>賃金台帳とは

源泉徴収簿との違い

給与明細書は賃金台帳ではありません。

 


【年単位】事前準備

賃金管理>賃金(給与・賞与)計算フローにおける【年単位】は勤怠管理の1年と同じです。

 

【年単位】の定義は賃金管理の目的によって異なります。

  • 所得税(年末調整)
    1月支払い分から12月支払い分までの1年間

  • 労働保険年度更新
    4月締切から翌年3月締切までの1年間

  • 社会保険算定基礎届(標準報酬月額の定時決定)
    9月分保険料(10月支払分で控除)から翌年8月分保険料(9月支払い分で控除)の1年間

  • 社会保険賞与支払届(健康保険標準賞与額年間累計)
    4月支払賞与から翌年3月支払賞与までの1年間

多くの給与計算ソフトは、給与計算、賞与計算の他、年末調整にも対応しています。

そのため、賃金データを管理するための1年間は【所得税】を基準にしています。

 

給与計算ソフトを活用している場合、

給与計算ソフトの【1年間】と給与計算フロー【1年】との違いに注意が必要です。

 

就業規則、賃金規程等に基づき、、、勤怠項目に使用する数字を整える。

勤怠管理>勤務予定表から数字を取り出し整える。

  • 所定労働日数、所定休日日数、法定休日日数、所定労働時間など

 

 

就業規則、賃金規程等に基づき、、、支給項目、控除項目の計算に使用する数字を整える。

  • 時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当の計算に使用する割増率など
  • 欠勤控除、遅早控除、その他不就労控除に使用する数字
  • 賃金控除協定に基づいて控除項目を用いて控除(給与から天引き)する数字など

 

【給与計算期間単位】事前準備_スケジュール確認

給与計算そのものが終わっても、法定控除項目の納付、月額変更確認などの業務があります。

給与計算できる期間は、給与計算期間の締切日の翌日から支払日の前日まで。

 

金融機関振込の場合、

金融機関によっては支払日の3日前までに振込データを届出なければならないこともあります。

 

土曜日、日曜日、祝祭日、会社の所定休日によっては、

現実に給与計算業務に使用できる時間(期間)がタイト(窮屈)になる可能性があります。

 

あらかじめ、給与計算に使用できる時間(期間)を把握しておきましょう。

 

就業規則、賃金規程等に基づき、、、賃金計算のスケジュールを把握する。

賃金計算締切日、支払準備(金融機関指定日・窓口営業日)、支払日など

賃金(給与・給与)計算の設定が変わる時期を事前に把握する。

  • 毎年1月(に支払う給与から適用)
    • 源泉所得税額表の改定

  • 毎年3月(ときに4月)(翌月に支払う給与から適用)
    • 健康保険料率、介護保険料率、子ども子育て拠出金率の改定

  • 毎年4月(に締切日がある給与から適用)
    • 雇用保険料率、労災保険料率(約3年ごと)、一般拠出金率、社会保険現物給与価格の改定

  • 毎年6月(会社の設定による)
    • 特別徴収の住民税額の変更(6月分)

  • 毎年7月(会社の設定による)
    • 特別徴収の住民税額の変更(7月分から翌年5月分まで)

  • 毎年9月(翌月に支払う給与から適用)
    • 標準報酬月額の改定

  • 毎年10月(に締切日がある給与から適用)
    • 最低賃金の改定=社員の給与設定が最低賃金に抵触していないか確認する。

  • 毎年12月(~1月)
    • 源泉所得税の年末調整

  • その他(随時)
    • 通勤手当の非課税限度額の改定
    • 扶養異動による特別徴収の住民税額の変更
    • 月額変更届による標準報酬月額の改定
    • 産前産後・育児休業開始による社会保険料免除
    • 年齢到達による、、、介護保険該当・不該当、雇用保険料免除、厚生年金保険資格喪失、健康保険資格喪失

 

給与計算フロー

給与計算を実行できる期間は、給与計算期間の締切日の翌日から支払日の前日まで。

給与計算そのものが終わっても、月額変更確認、給与支払、法定控除項目の納付などの業務があります。

  • 給与計算期間締切日_翌日
    • 当期勤怠記録簿(出勤簿など)を締め切る。

  • 給与計算期間締切日_翌日から支払日の前日まで
    • 給与計算条件を確認・更新する。
    • 従業員情報を確認・更新する。
    • 勤怠を集計する。
    • 〔賃金台帳の調製〕勤怠集計を記入する。
    • 〔賃金台帳の調製〕支給項目を計算する。
    • 〔賃金台帳の調製〕控除項目を計算する。
    • 〔賃金台帳の調製〕差引支給額を計算する。
    • 〔賃金台帳の調製〕計算結果を確認。確定する。
    • 【前3か月の間に賃金改定があった場合】社会保険_月額変更対象者を確認する。
    • 給与支払準備をする。

  • 給与支払日_当日
    • 給与明細書を交付する。

  • 納期限ごと_法定控除項目を納付する
    • 毎月末日_社会保険料の納付
    • 翌月10日_源泉所得税
    • 翌月10日_特別徴収の住民税を納付する。

 

給与計算期間締切日_翌日から支払日の前日まで

給与計算条件を確認・更新する。

【給与計算期間単位】事前準備_スケジュール確認>給与計算の設定が変わる時期を事前に把握する。

で確認した、給与計算の設定に変更がある場合には、設定を更新する。

  • 社会保険料率の設定変更
  • 健康保険、介護保険、厚生年金保険、子ども子育て拠出金
  • 労働保険料率の設定変更
  • 雇用保険、労災保険、石綿一般拠出金
  • 所得税の設定変更
  • 源泉所得税額表
  • 非課税限度額
  • 特別徴収住民税の設定変更
  • 特別徴収住民税通知書

 

従業員情報を確認・更新する。

【給与計算期間単位】事前準備_スケジュール確認

で確認した、給与計算の設定に変更がある場合には、設定を更新する。

  • 通勤手当の非課税限度額の改定
  • 扶養異動による特別徴収の住民税額の変更
  • 月額変更届による標準報酬月額の改定
  • 産前産後・育児休業開始による社会保険料免除
  • 年齢到達による、、、介護保険該当・不該当、雇用保険料免除、厚生年金保険資格喪失、健康保険資格喪失
  • その他
    • 賃金体系の変更、労働契約変更による給与計算条件の変更がある場合には、設定を更新する。

 

勤怠を集計する。

勤怠管理>を参照。

 

〔賃金台帳の調製〕勤怠項目を記入する。

【給与計算期間単位】勤怠集計値を記入する。

 

[画像]厚生労働省>労働基準>主要様式ダウンロードコーナー>賃金台帳より引用

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

 


〔賃金台帳の調製〕支給項目を計算する。

1つの支給項目には、属性が複数あります。

支給項目の算出に当たり属性集計が含まれる場合、属性集計を確認しながら計算します。

支給項目の属性 属性集計の目的
支給項目体系 単価(月額、時間額、日給、回数、計算単価など)勤怠項目に合わせて使用
固定給・変動給の別 社会保険月額変更届該当確認に使用
割増対象賃金 時間外労働手当、深夜労働手当、休日労働手当の計算に使用
不就労控除対象賃金 不就労控除額の計算に使用
所得税課税対象賃金 所得税課税対象額の計算に使用
労働保険対象賃金 雇用保険料、労働保険料の計算に使用
社会保険対象賃金 社会保険標準報酬月額(算定基礎、月額変更)に使用
通貨・現物の別

 

現物支給が所得税、社会保険、労働保険対象となる場合には支給項目に計上します。

賃金支払額を確定する際、支給項目計上分はダブルカウント(二重払い)となってしまうので控除項目で調整します。

  • (法定外)時間外労働手当を計算する。
    • 時間外労働手当=時間額*法定外労働時間*割増率
  • 深夜労働手当を計算する。
    • 深夜労働手当=時間額*深夜労働時間*割増率
  • (法定)休日労働手当を計算する。
    • 法定休日労働手当=時間額*法定休日労働時間*割増率

 

〔賃金台帳の調製〕支給項目>小計を計算する。

総支給額のほか、控除項目(雇用保険、所得税)計算に必要な対象賃金を小計として算出する。

属性 属性集計の目的
総支給額 控除項目の合計値を引く前の値。差引支給額の計算に使用
労働保険対象賃金 雇用保険料、労働保険料の計算に使用
所得税課税対象賃金 所得税課税対象額の計算に使用

〔賃金台帳の調製〕控除項目>法定控除項目を計算する。

  • 計算方法_健康保険・介護保険料(被保険者負担分)
    • 協会けんぽ保険料額表に基づいて計算する場合
      • 健康保険料=健康保険標準報酬月額*健康保険料率(被保険者負担分)
      • 健康保険料+介護保険料=健康保険標準報酬月額*(健康保険料率+介護保険料率)(被保険者負担分)

    • 協会けんぽ保険料額表に基づいて計算し、健康保険と介護保険を分ける場合
      • 介護保険料=(健康保険料+介護保険料)-健康保険料

    • 健康保険と介護保険を個別に計算する場合
      • 健康保険料=健康保険標準報酬月額*健康保険料率(被保険者負担分)
      • 介護保険料=健康保険標準報酬月額*介護保険料率(被保険者負担分)


  • 計算方法_厚生年金保険(被保険者負担分)
    • 厚生年金保険料=厚生年金標準報酬月額*厚生年金保険料率(被保険者負担分)
  • 社会保険(健康保険・厚生年金保険)料の端数処理
    通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)に基づき
    50銭以下は切り捨て。50銭を超える場合は切り上げ。

  • 計算方法_雇用保険料(被保険者負担分)
      • 雇用保険料=労働保険対象賃金*雇用保険料率(被保険者負担分)
    • 雇用保険料の端数処理
    • 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)に基づき
    • 50銭以下は切り捨て。50銭を超える場合は切り上げ。

 

  • 計算方法_所得税
  1. 賃金台帳>支給項目_所得税課税対象賃金(属性集計)を算出する。
  2. 所得税課税対象額を算出する。
  3. 所得税課税対象額=支給項目小計【所得税課税対象賃金】-(健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)
  4. 源泉所得税額表から所得税を求める。
  5. 所得税課税対象額と扶養控除親族数がクロスした値が所得税です。
  • 源泉所得税額表によらず、電算機計算の特例により所得税額を算出する場合
  1. 課税給与所得金額=所得税課税対象額-(1+2)を算出する。
  2. 別表第一より給与所得控除を算出
  3. 別表第二より配偶者(特別)控除の額、扶養控除の額、基礎控除の額を算出
  4. 課税給与所得金額を別表第三に当てはめ所得税を求めます。
  • 所得税の端数処理
    源泉所得税額表によらず、電算機計算の特例により所得税額を算出する場合
    給与所得控除の額(別表第一)では、1円未満端数を切り上げ。
    所得税額(別表第三)では、10円未満の端数を四捨五入。

 

 

〔賃金台帳の調製〕控除項目>法定控除項目以外=賃金控除協定に基づき控除する控除項目を計算する。

食事代、積立金など賃金控除協定に基づき給与から控除する金額がある場合には、控除額を計算等により算出し、各控除項目に記入する。

 

〔賃金台帳の調製〕総控除額を計算する。

  • 総控除額=控除項目>法定控除項目+控除項目>法定控除項目以外

 

〔賃金台帳の調製〕差引支給額を計算する。

差引支給額(給与支払日に支払う金額)を計算する。

  • 差引支給額=総支給額-総控除額

 

〔賃金台帳の調製〕計算結果を確認・確定する。

  • 給与計算条件の確認・更新
  • 従業員情報の確認・更新
  • 勤怠集計
  • 〔賃金台帳の調製〕勤怠項目
  • 〔賃金台帳の調製〕支給項目
  • 〔賃金台帳の調製〕控除項目

それぞれにつき、誤りがないか?=正しく実行できたか?確認し、給与計算結果を確定する。

 

【前3か月の間に賃金改定があった場合】社会保険_月額変更対象者を確認する。

賃金改定により固定給に変動があり、変動月を含む3か月の総支給額(社会保険対象賃金)の月平均額による標準報酬月額等級が、従前の標準報酬月額等級と比較し、2等級以上変動があった場合には、標準報酬月額が改定されます。

固定給の変動 月平均標準報酬月額等級 月額変更該当
UP 2等級以上UP 該当する
UP 2等級以上DOWN 不該当
DOWN 2等級以上DOWN 該当する
DOWN 2等級以上UP 不該当

給与支払準備をする。

給与明細書を作成(賃金台帳から給与明細書に必要な事項を転記)し

給与支払方法(金融機関振込、現金支払い)にあわせて、給与支払いの準備をする。

 

給与支払日_当日

給与明細書を交付する。

金融機関振込の場合、当日午前10時までに払い出しできるようにする。
現金支払いの場合、給与を手渡したら受取のサインをもらう。

 

納期限ごと_法定控除項目を納付する

法定控除項目を納付する。

賃金台帳の合計値を参照し、給与・賞与から控除した額(=経理処理上の預り金)を法定納期限までに納付します。

 

毎月末日_社会保険料の納付

  • 毎月20日頃
    その月の末日に納付する社会保険料のお知らせ(保険料納入告知書)が郵送される。
  • 社会保険料を確認する
    被保険者分と会社負担分の合計額が、保険料納入告知書と『ほぼ一致』しているか?を確認する。
    ほぼ一致=端数処理の関係で保険料保険料納入告知書と誤差が出る場合があります。
  • 毎月末日までに納付する。

 

社会保険料の納付>「ほぼ一致」の確認方法

 

翌月10日_源泉所得税

  • 賃金(給与・賞与)計算から控除した所得税額を確認する。
  • 個人事業主等取引先の源泉所得税額を集計する。
  • 源泉所得税納付書を作成する。
  • 翌月10日までに納付する。
    • 納期特例を受けている場合は法定納期限までに納付する。

 

翌月10日_特別徴収の住民税を納付する。

  • 賃金計算から控除した住民税額を確認する
  • 住民税納付額を確認する
  • 市区町村指定の納入書を作成する。
  • 翌月10日までに納付する。
    • 納期特例を受けている場合は法定納期限までに納付する。